ショック療法
ニュー・ベレンガリア、ルーン・レイク地区、ルーン・レイク高校
アデルとミタニは、校舎間に設置されたテーブルにつき、ゆったりと放課後のひと時を過ごしていた。 全てのクラスを欠席したジェイズとトーマが、今頃、一体、何処にいるのだろうかなと、思っていた。 でも、だいたい見当はついていたのだが。 カオルの姿も見かけなかったが、その理由は、はっきりしていた。
アデル: たまには、僕たちだけっていうのも、いいね。
ミタニ: ほんとだ。
アルテミス: 何の話かな? 今日は、2人だけの時間を楽しんでるようだが。
ミタニ: お前が、邪魔してるだろ!
アルテミスは、ミタニに近づいて寄りかかると、からかうようにニヤニヤして、ミタニを煽(あお)り立てて自分の顔を殴らせようと挑発した。
アルテミス: ははぁ、なるほど。 君は、「いつも一言多い」性格なのだろうか? 私が、修繕してやろう。
ミタニは、アルテミスを鋭く睨んだ。
ミタニ: 俺に近寄れるもんだったら、やってみな。
アルテミス: 減らず口も、大概にしておけ! 数百メートル先からでも、君の身体能力を一時停止させる方法は、山ほどあるというのに!
アデル: 似合いの宿敵、出現だね、ネージュ。
アルテミス: ミャーハッハッハッ!
遠くの方から手を振っている姿が、彼らのテーブルに向かって猛ダッシュして来た。
アデル: あっ、あれって、カオルだよね。
ミタニ: またかよ? あいつ、マゾだったのか。
カオルは、息もきれぎれに、テーブルにたどり着いた。 彼は、ほとんどいつもと同じ様に見えたが、腕に、点滅する赤色ライトの付いた黒いバンドを、巻いていた。
カオル: やあ!
アデル: ここに来るのって、命がけの行為だって、分かってるの。
カオル: 分かってるって。 ちょっとだけ、あの子から離れていたくてさ。
ミタニ: まだ一日しか経ってないが、ジョアンナは、むちゃくちゃクレイジーな女だな。 なんで、あいつと、まだ付き合ってるんだ?
カオルは、すばらしい記憶を呼び戻すかのように、虚ろな眼差しで、突然、ニヤけた薄ら笑いを浮かべた。
カオル: ジョアンナは、すっごく、刺激的なんだ。 へ、へっ。
ミタニ: お前、いま、一瞬、でれ〜ッとした?
アルテミス: したようだな。
カオル: してないって。
“ブブーッ”
カオル: わっ、わぁーっ!!
“ドサッ”
カオルは、煙を放ちながら、地面に落下した。他の3人は、当然のことを見るかの如く、何も手出しはしなかった。
ミタニ: ダウンしたな。
アデル: まただね。
アルテミス: 保健室の看護師か誰かを、呼んで来るべきではないのか?
ミタニ: 前に、呼んだ。 ほんと、2回も、今日はな。
アデル: 3回目ともなると、それほど大騒ぎするほどのことでもないように、思えてくるよ。
くすぶり続ける発煙体は、もとい、カオルは、うめき声を上げた。
カオル: うぅぅぅぅぅ、、、、
ジョアンナ: そこに、いるのねーっ!
皆は、ドキッとして振り返った。 背後から、ジョアンナが、怒り心頭に足を踏み鳴らしながら、テーブルの方にやって来た。 彼女は、カオルの腕のバンドと対になった同じデザインの小型リモコンを、手に持っていた。
ジョアンナ: 言ったでしょ、私の彼になったのよ! こんなお間抜けさんたちは、もう、用済みでしょ!
彼女は、カオルのフーディーの背中を掴んで引っ張り上げ、彼を立ち上がらせた。
ジョアンナ: さあ、彼氏! 行くわよ!
皆は、ジョアンナが、今だふらつくカオルを引きずるように連れて行くのを、ただ見守った。
アデル: 何はともあれ、あのバンド、何処で手に入れたんだろ?
アルテミス: 私が作ったんだ。 それを盗んだんだろう。 でも、一度も、作動確認していないがな。 ちゃんと正常に機能しているようで、満足だ!
ミタニ: お前は、大物クレージーだな。
アルテミス: ミャーハッハッハッ!
アデルは、アルテミスを無視して、ミタニを見た。
アデル: ジェイズとトーマは、明日には、学校に来るかな?
ミタニ: どうだろう、でも、2人のどっちかは、変な歩き方してるぞ、きっと。 ジェイズに、10レン、賭けるぞ。
アデル: じゃあ、僕は、トーマに、10レン。
アルテミス: 私も乗った! 両方に、10レンだ!
アデルとミタニは、2人とも、いぶかるように、アルテミスを見た。
アルテミス: 何かね? 選択肢は、それしか残っていないが。
つづく。。。
本エピソードのイラスト委託作成:
Miyuli
Catnappe143
Kurama-chan
Atomic-Clover
「都市」の画像は、「SimCity 4」の画面です。